11月に東京での初雪は54年ぶりとのこと。
何となく雪景色の写真を撮りたくなった。
寒いので、どこにでかけるというのではなく
小雪が舞う中、ごく近所を散策した。
雪が多少でも積もると見慣れた景色は一変する。
まるで別世界に迷いこんだように思える。
ここでは一年にそう何度もない出来事なので
思い切って外に出かけた。
赤い楓(かえで)の葉や南天の実や山茶花(さざんか)の花の色が
なんとも鮮やかで真白な雪によく映える。
南天の実や山茶花の花たちは、これから始まる本格的な冬に
野鳥の餌となって、その命を支えてゆく。
なかなか、そうした様子をカメラに収めることはできないけれど
真冬に雪に濡れながら山茶花の花の蜜をついばむ鳥を目にすることがある。
そうしたとき心のなかで「がんばれ」と応援する。
人間だって大変だけど冬を越える野鳥たち
特に初めての冬を越える若鳥は餌もとぼしく厳しいだろう。
でも、この世界はどんなときも手を差し伸べるものがいて
命をつないでいける。そうでなければ野鳥は絶滅するしかない。
植物も同じように花を咲かせ、実をつける。
それは次の世代へと命をつなげる営みで
誰かのためにというのは、実は自分自身のためだったりする。
そうやって、この世界はどこかで誰かと繋がり
自分はだれかのために、また自分は誰かに支えられ
もちつもたれつ生きている。
わたしというものも野鳥もこの世界のなかで
たったひとりで生きてはいるけれど、ひとりきりでもない。
初雪が降る街は何だかとても美しかった。
まるで天からの贈り物のように。