『サピエンス全史上巻』の感想文 NO.3

 『サピエンス全史』は、科学界に大きな衝撃を与えた、出来事のひとつとして、中東とヨーロッパの現代人に特有のDNAのうち、1~4%がネアンデルタール人のDNAであった事を挙げている(『サピエンス全史』上巻p29)。

 さらに私たちは、進化上の兄弟姉妹を欠いているので、自分たちこそが、万物の霊長であり、ヒト以外の動物界とは大きく隔てられていると、つい思いがちになる。(『サピエンス全史』上巻P32)

 読み進めていくと、ホモ・サピエンスには、7~3万年前に認知革命(新しい思考と意思疎通の方法)が起こったと述べている。この頃には、ネアンデルタール人が絶滅している。さらに、オーストラリア大陸の大型動物相が絶滅。やがて、アメリカ大陸の大型動物相も絶滅している。すべてホモ・サピエンスの行動の結果であり、かつて地球上に、動物界にこれほどの影響を与えた種は存在しなかったと考えられる。つまりは、生態系のバランスを壊してきた存在だと、言えるかもしれない。

 ほんの序盤にすぎない時点で、すでに現代人に何かしらの警鐘を鳴らす文言である。ゴーギャンの『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』という絵を彷彿とさせる。ゴーギャンはこの絵をタヒチで描いた。ゴーギャンはおそらく、タヒチで我々の原始的なもの、そして進化し続けていく果てしなさに触れたのだと感じる。正直なところ、これほど熟読した本はかつてなかったように思う。それほど重く圧し掛かる、現代社会の有り様に疑問を抱かずにはいられなくなる。